三交不動産欠陥マンション紛争記
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プレストレスト鉄筋コンクリート
2007年 06月 06日
「本来、RC構造物は長期応力のもとでも曲げひび割れの発生を許す複合構造物であるのに対し、PC構造はプレストレスの導入によって長期応力のもとでの曲げひび割れの発生を許さず、コンクリート全断面が圧縮にも引張りにも有効に働くようにしたものである。この両者は曲げひび割れ発生以後の終局耐力に至る間の弾塑性範囲では、本質的には同様の力学的挙動を示すが、長期応力のもとでの曲げひび割れの発生を前者が許し、後者は許さない点で、コンクリート系構造物の両端に位置する構造といえる。」日本建築学会(プレストレスト鉄筋コンクリート構造設計・施工指針・同解説より) そもそも、プレストレスト鉄筋コンクリートとは、PC鋼材を緊張させ、設計荷重とは逆向きの力を発生させることによって、曲げひび割れ幅の発生やたわみを制御する目的でPC鋼材によってプレストレスの導入された鉄筋コンクリート構造体のことを指すが、当マンションアンボンドスラブの設計においては、上記プレストレスト鉄筋コンクリート構造設計・施工指針・同解説のもと設計がなされており、Ⅲ種PCでの「最も不利な長期設計応力作用時にコンクリート断面引張り側に曲げひび割れの発生を許すが、軽度のプレストレスの導入と引張り側普通鉄筋とによって、きびしいひび割れ幅制限を満足する設計」により、いわゆる現行のRCでの「最も不利な長期設計応力作用時にコンクリート断面引張り側に曲げひび割れの発生を許すが、引張り側普通鉄筋によってひび割れ幅制限値を満足する設計」よりも、軽度のプレストレス力が加わることによってよりきびしいひび割れ幅の制御が求められることとなる。 ★最大ひび割れ幅制御目標値 「環境や荷重および建物の用途・種類などの諸条件を考慮して0・2mm以下の値に定める。但し、その値には、コンクリートの乾燥収縮による影響を含めるものとする。」(日本建築学会同指針・解説より) 現行のRC部材に対する0・3mmというひび割れ幅制限値に比べると、より厳格な制限となるが、RC部材(鉄筋)よりもPC鋼材の方が腐食等の影響を受けやすく、また、PC鋼材の腐食・破断の方が構造体に与える影響が大であることなどから考慮しても、許容ひび割れ幅を、きびしく、正確に制御すべきであることが容易に理解できる。 ★長期応力に基づく断面算定 「曲げひび割れ幅を算定し、その値が目標値を満足することを確かめる。なお、ひび割れの発生を仮定しない設計においても、一時的な超過荷重・収縮応力・温度応力などによる有害な残留ひび割れが生じないように断面引張側に鉄筋を配置する。 また、必要に応じて部材のたわみの大きさを検討しなければならない。」 (プレストレスト鉄筋コンクリート構造設計・施工指針・同解説より) アンボンドスラブにおいては、通常の鉄筋コンクリート(RC)・鉄骨鉄筋コンクリート(SRC)よりもひび割れやたわみに対してより厳格な判断を行わなければならいことが理解できよう。
by magekiretuz
| 2007-06-06 18:41
| 建築
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